説明するのも面倒だし、この急展開に付き合ってやるほど俺は暇な人間ではない。


そもそも、マンボウのことについて説明する口を俺は持ち合わせてなどいないし。


逃げよう。


変人に近づくのは芽衣の教育上にも宜しくないしな。


変人の反対方向へダッシュする。


「あ! 待つですぅ!」


待てと言われて待つ馬鹿などいない。


そして気付いた。あ、芽衣肩車したままだ。


この状態で走るのは危険だ。


一度止まって芽衣を下ろした瞬間、後頭部に衝撃が走った。


眼前に写ったのは灰色の地面。薄れてゆく意識の中で、俺は反射的に芽衣へと視線を向けた―――