そして冬がきた。

そして山田先輩から部活のみんなに厳しいお言葉があった。

「冬のマラソン大会、10位以内に入らなかったらグランド50周ね」

みんな絶句した。
そして誰かが「鬼だ」と呟いた。

みんな必死だった。
50周走らないために…

いつものように厳しい練習が終わり、私は帰ろうとした。
「裕美子、ちょっとつきあえ」
永井先輩が珍しい…
私と永井先輩は帰りの電車が正反対なのだ。別に用事はないし、
「いいですよ」
と答えた。
「悪いな」

近くの公園に連れていかれた。
「何かご相談ですか ?」

「んーそうかもな」
と言いながら永井先輩はブランコに乗った。
私も隣のブランコに乗った。

「山田先輩が好きとかですか?」
私は期待をこめて言った。
そうなったときの山田先輩はきっと嬉しそうな顔をするだろうと思いながら…

永井先輩は心外だと言わんばかりに顔を歪めた。
「俺は山田は好きだが、恋愛じゃない。友達だ。」

そして息をすった。

「俺が好きなのはお前だ。」



何を言われたのかわからなかった。

「え…」

「好きだ。」

望先輩の真剣な顔…

すっかり暗くなった公園の電灯にてらされ、私は圧倒された。

私が何も言えずにいると永井先輩が私の手を握った。

「好きだ。付き合ってくれ。」

初めて告白されたなぁと冷静になってきた頭が考えた。

私がここでイエスなら山田先輩が悲しんで…誠にはチャンスがでてきて…

私がここでノーなら山田先輩は悲しまない…誠はそのまま…

なんてこれは私たちのことなのに周りの人間ばかりを考えていた。

「考えさせてください」

頭をもっと冷静にしないと…

「だ~めっ」
からかうときの永井先輩の顔…

「え?」

「今がいいっ」

「えぇっ!!」

「迷うくらいなら付き合って」

永井先輩は立ちがっていつの間にか私を抱きしめていた。

「俺返事待ってる間に怖くて死んじゃう…」

耳元で呟く先輩の声が、頼りなくて…
私は先輩を抱きしめてしまった。