それからは毎日、永井先輩と一緒に帰った。駅までだけど。

たまに私の家までわざわざ送ってくれたりした。

優しい優しい永井先輩…

そんな私たちに部員はうすうす気づいているようだ…

山田先輩の私をみる目に時々戸惑いがみえた。
申し訳ないような…でもそう思ってはいけないような不思議な感覚だった…

昼休みに誠が私のクラスにやってきた。
「ちょっとこい」と屋上にいった。
「俺、山田先輩にいった。」

「え?」

空を見上げて誠はいった。

「マラソン大会で一位をとったら付き合って下さいって」



「えー!!!!!!」

まさか一年生の誠がマラソン大会で一位だなんてだいそれたことを!!

「無理だとか思ってんだろ?」
誠はにやっと笑った。自信がある顔だ。

「だって、山田先輩はいいよって言ったんだ…やる気が出ないわけないだろ?」

山田先輩が…?

「いいよって?」

私はそこにもびっくりした。

「お前、永井先輩と付き合ってるだろ?」

誠は落ち着いて私の目をみた。
なんだかキュッと胸が切なくなった。

「うん…」

「山田先輩はきっと永井先輩を諦めたんだと思う。」

そうか…私がわかったんだから誠も分かるよね…

「最低でも永井先輩は抜かす…」

「…」

誠は真剣だ。

何故、何故、この胸は痛むのか分からなかった。

「負けんなよ」

私はそれだけをぽつりと呟いた。