トリッティーの壁から手

「まぁ、こいつらは気にするな。熱くなるとこっちがやけどする」




小さなため息まじりに低く落ち着いた声。


ふわふわの綿毛も帽子をかぶった少年も気になる目線を一点に向けた。


チャールズも耳をすまして、声のする、いるだろう場所に目をやる。



実際はマレイネスが視界に入って気にもなるがもうしょうがないだろう。



男はとても落ち着いた口調で、やっぱり子供に言い聞かせる大人のように話し出した。


それはチャールズにとって少しだけ、ほんの少しだけ、せつなかった。


「俺には名前がないんだ」


「名前がないの?」



驚くチャールズに男は笑った気がした。


大人の、子供を気遣った安心させようとする寂しい笑い。



「そういう設定なんだ。
だからって不便なんてしたことない……呼んでくれる相手のいない世界で俺は生きてたから。」


どういうことだろう?



チャールズにまた疑問が積み重なる。


見えないはずなのに、感情を見せる顔なんてないのに、はっきりそこにいる人物を感じていた。