話は高校生の僕に戻って―――

 「意味わかんねぇ…」 
 そう呟きながら、けれど彼女が駆けていく方を無意識に目で追っていた。
 
 大抵の映画がそうであるように、
 去っていく女の子の背中を目で追うと、その後に不幸が待っているものだ。

 僕の場合もその例に漏れなかった。


 彼女の駆けた先には、男が立っていた。


 僕の頭はクールダウンしようとしていたが、心が許さなかった。
 ワケもなく、動悸が早まった。
 

 男は立っていた。
 寒いって言っても9月の上旬のこの日に、学ランをピッチリと着て。
 彼はポケットに手を入れて、渡り廊下の支柱に寄りかかっている。



――誰だろう?