「……チェスマン?」
 
 そう、その木片は、チェスの駒(チェスマン)だったのだ。
 扉を開くとちょうど裏になってしまうので、来た時に気付かなかったのも無理はない。
 
 しかしどうして、

 「どうして屋上に?」

 なぜ、チェスの駒が屋上に?



 僕はそれを拾い上げた。


 「……やれやれ、お前も世界(盤面)を抜け出そうとしたのか?」
 僕はジョークを言った。出来るだけハード・ボイルドに。

 別に笑おうと思っていない。本当の事だ。
 
 
 何故ならそれは…
 “いかなるときも同じ色の盤面にしか移動を許されない”という駒、
 『ビショップ』だったからだ。