以心伝心! 志氣高校 洋将棋部

 株主優待券。

 スターバックスの株、100株。父親のバブル期の遺産である。
 “彼”は(父親をそう呼ぶあたり、僕はやはりマズイ)その頃大学生で、怖いものなしだった、らしい。そして世間の好景気に遅れまいと、バイト代を注ぎ込んで株を買ったのだ。


 そのとき『スタバ』の日本への出店は無し。
 彼はアメリカで流行っている“ファースト・フード店”だと思っていたらしい。商標ロゴの『セイレーン』(ギリシャ神話の女神)から、オリーブ・オイル(言わずもがなギリシャの名産品)やらなにやらを使った、パスタの店、と信じて疑わなかったそうだ。

 その程度の知識で彼は有り金を全て注ぎ込んだ。
 

 まったく、すごい決断力である。
 
 皮肉にも、その図太さとか生命力は僕にもっとも枯渇している力だった…。
 

 彼はたぶん、自分に宿るそれらの力のコンマ数パーセントも、僕には分けてくれなかったのだろう。

 姉は30パーセントぐらい貰っているハズなのに…。