以心伝心! 志氣高校 洋将棋部

 「やれやれ」
 こんどは僕が、やれやれ、と言う番だった。


 ミヤコという名のあの娘、お前の彼女じゃないのか?
 と言おうと思ったが、黙っている事にした。
 
―――まぁ、いいや。 

 「来いよ、こっちだ」
 僕は黙って三笠の後に連なって歩いた。
 雨は宿命的に降っていた。
 窓から階下を見ると、下校する生徒達の傘が正門を埋めていた。

 葬列みたいな黒と白(透明なビニール傘)の中、時折、淡い暖色の傘がある。 コンクリートに咲く花みたいだった。

 人気がまばらになった放課後の校舎からは、いつもと全く異なる息吹を感じた。

 
 「考えてみれば――」
 僕は、何故だろう、三笠の背中に独り言を言った。
 「放課後に学校にいるのは、はじめてだ」


 三笠は、うん、と頷いた。