<side 巧哉>

あれから幾らか日が経ったことか……
あの日、私の腕の中にいた李由姫様は御顔どころか声さえも聞いていない。何度この高い塀に向かって名前を呼んだかも分からない


『李由姫様』

冷たい石に吸い込まれてゆく声が虚しさを増させる。



―――――遠い





深い溜め息を吐くと

「巧哉様?」

『沙菜さん』

振り返ると沙菜さんが浮かない表情で文を抱いていた。


「文でございます」

胸が騒いで嫌な予感がした


「李由姫様からでございます」


受け取る指が震える



「泣いておられました」