「郁、もう帰ろ? おばさん、待ってるよ」


浴衣の裾を、恵美が引いた。


「……ん」


恵美に手を引かれて、人の流れに混じる。

がやがやとした、祭りの後の熱気。
たくさんの人に紛れて、恵美と並んで歩く。
帯を見下ろすと、アメジストの帯飾りがきらりと光って。
指で弾くと、恵美がそれに気がついた。


「それ、かわいい。郁子、そんなの持ってたんだ」


「うん」


「浴衣姿もなかなかいいよ。ずいぶんヨレヨレだけど」


「ひど」


明るく話し掛けてくれる恵美の優しさが嬉しい。

あたしの横を、風船を持った女の子が通り過ぎて行った。
赤い浴衣の、金魚帯が揺れる。

先を行く両親の手を取り、はしゃぐように跳ねた。
その姿を、何となしに見つめて。








「郁!」