祭りが終わり、帰路につく人ごみの中を、あたしは走っていた。
さっきまであんなに激しくサイレンが響いていたのに、誰も知らない様子だった。


「てっちゃん、どこ!?

すみません、男の子見ませんでしたか?」

すれ違う人に聞いてまわる。


白いTシャツにジーンズ姿。
茶色い髪で、背はあたしと同じくらいで、綺麗な笑顔の男の子なんです。


探しても探しても、誰に聞いても、全然見つからない。

人ごみと夜の闇は、てっちゃんを隠してしまう。


てっちゃん、あたしはかくれんぼは苦手なの。
てっちゃんが見つけてくれないと、あたしはダメなの。


「てっちゃん! てっちゃん!」


いない。
いない。



「どこ? てっちゃん……っ!」



「……郁子!!」


「てっちゃん!?」


肩を掴まれて、振り返った。
そこにいたのは、険しい顔をした恵美だった。


「あんた何してんの!? 鉄太がいるわけないじゃんっ」


「いたの! てっちゃん、さっきまであたしと一緒にいたんだよ? 一緒に歩いて、花火見て……っ」


「鉄太は死んだんだよ? もうずいぶん昔にっ!」


しっかりしなよ、と恵美はあたしの体を揺さぶった。