「すご……い。ねえ、てっちゃん、綺麗だね!」


横にいるてっちゃんを見る。
と、そこにはあたしを見つめるてっちゃんの瞳があった
ばち、と視線があった瞬間、てっちゃんは慌てて空を見上げた。


「あほ郁子! お前は黙って空見上げてろっ」


「ご、ごめんっ」


顔を上にむけて謝る。
瞬間的に顔が真っ赤になった。

あんな男の人の顔してる鉄太を、初めて見た。
あたしの知ってるてっちゃんじゃない。


こわごわと、様子を窺った。
あらわになった首はあたしより太くて、喉仏がくっきり現れている。
シャツから伸びた腕は筋肉がしまっていて。

今日繋いだ手は、幼い頃の記憶よりも、当たり前だけど、大きかった。


てっちゃんのことを、何でも知っているつもりでいたけれど、あたしにはまだ知らないことがあるんだ。


「ちらちら見んな、あほ郁子」


気付いていたのか、ぺちんとおでこを叩かれた。


「んもう、あほあほ言わないでよ。あほ鉄太!」


「お。反撃してくるか」


来い、とファイティングポーズをとる鉄太。




と、笛を吹いたような甲高い音がした。