ガラスのタンポポ

「ヤメロッ!!」


頭より先に手が出ていた。


橘の持っていたハサミを払い除けると、ちょうど刃の部分が手に当たったらしく、オレの手から血がしたたった。


「何やってんだよ、オマエら」


自分でも驚く程、低い声が出た。


怒りで震えそうになるのをやっとの思いでこらえた。


「あ、天宮くん…!」


取り巻き達が散っていくのを橘も追おうとしたが、オレが行く手をはばんだ。


「奏来に何してくれてんだよッ!!」


「だ、だって、内海さんがいなきゃ…内海さんなんていなければいいッ!死んじゃえばいいッ!!」


一一一バシッ!


女に手を上げたのなんて初めてだった。


「死んじゃえばいい」


オレはこの一言が許せない。


死ぬ、って事がどれほど人の心に重くのしかかるか、過去を失くすか、未来を変えるか、この女はわかってない。