ガラスのタンポポ

「ね?おいしいでしょ?」


ファミレスのハンバーグをこんなに甘く感じた事はない。


甘く。


酸っぱく。


ほろ苦く。


これはオレの胸から沸き上がる味なんだろうな。


自分でもどうにかなっちゃうんじゃないかと思うくらい、心臓ヤラれてる。


「うまいな?」


「うんっ」


食べ終えて、奏来はワリカンするときかなくて。


2人で仲良く支払って店を出ると、春の陽気で暑いくらいだった。


どこに行こうってアテはない。


けど、時々前を歩く奏来のブラウスのレースが揺れ、背中で巻き髪が跳ね。


見て回る店に目をキラキラさせている奏来は。


解放された1人の女の子なんだと思えた。


オレができるのなら、いつだって奏来を解き放とう。


それが明日の生きる力になるのならば、オトばあと向き合えるのなら。