ガラスのタンポポ

♪〜♪〜♪


奏来のケータイが鳴った。


番号を知ってる友達なんて、いない。


かけてくるのは、多分、家族かオレ達2人のどちらかだろう。


オレはここにいるんだから、着信は兄貴だ。


「もしもし、聖ちゃん?」


奏来がはずんだ声を出す。


この声は、オレだけが聞きたい。


奏来には、オレの前だけで笑っていてほしい。


そう思うようになったのは、いつからだろう。


多分…そうだ、おじさんの葬儀で兄貴に抱きつき泣いた奏来を見てから…。


嫉妬ではなかった。


でもモヤモヤとオレの中に残った気持ちは、切なさと苦しさの混じったような重たい感情だった。


あれ以来、兄貴と真正面から向き合う事はなくなった。