ガラスのタンポポ

会話は長くは続かない。


それでも奏来は、わかりやすいよう丁寧に言葉を並べてオトばあの返事を聞き、今日の調子を伺う。


その日その日で認知の症状がコロコロ変わるので、会話から探るしかないのだ。


案外たやすく奏来の名前を口にする事もあれば、おじさんの帰りをしつこくせがむ日だってある。


もう戻って来る事のない人の帰りを問われるのは、数年経った今でも奏来にとっては辛いらしく、いつも言葉を濁す。