ガラスのタンポポ

一一一オトバアガコワレタ。


そればかりが頭の中を回り、奏来がどんな顔をしていたのかとか、紅茶に手をつけたのかとか、そんな余裕すらなかった。


ご馳走になった夕飯も、なんだか砂のようだった。


遅くまでオトばあは兄貴を離さず、


「母さん、仕事だから」


と言う兄貴の言葉に納得して、オレ達が家に帰れたのは、夜11時を回った頃だったと思う。


「孝司、気をつけて行くんだよ。翔ちゃん、バイバイ」


オレの事は翔と認識していたようだったけれど、兄貴の事は最後までおじさんと思い込んだままだった。