ガラスのタンポポ

「翔ちゃん、お待たせ。コーヒーがいい?紅茶がいい?」


奏来はいつも決まってワンピースだ。


買うと小さな奏来にはサイズが合わないらしく、自分で作ったワンピース。


小花柄だったり、リネンだったりするけど、オレは今日の白いワンピが奏来には一番よく似合うと思う。


「翔ちゃん?」


「ん?あぁ、じゃあコーヒー。インスタントでいいよ」


「はぁーい」


キッチンでカタカタと鳴るマグカップの音。


湯気のたったお揃いのマグカップがテーブルに置かれる瞬間。


いつものありきたりな光景なのに、いつもドキドキしてしまう。


インスタントコーヒーの安っぽい匂いと同時に、隣に座った奏来の香りを胸いっぱいに吸い込むと、濃いめのコーヒーを一口含んだ。


奏来のコーヒーは、少しだけ濃い。


オトばあが眠りにつくまで起きていなければならないからだ。