ガラスのタンポポ

やりきれない思いを抱えて家に戻り、それから奏来に会えたのは、通夜の夜だった。


ただ泣き崩れるオトばあと、悲しみを必死にこらえながらおそらくおじさんの会社関係であろう人達に挨拶を繰り返すおばさん。


奏来は。


奏来は泣きもせず、無表情のまま、真新しい制服を着て祭壇を見つめていた。


誰も寄せつけない横顔。


奏来に何か言葉をかけようかと思ったが、何を口にすればいいのか迷っていたオレは、祭場の端っこで、ただグズグズ立っているだけで。


そんなオレを置いて、兄貴は奏来の所へ行き、おばさんに断りを入れてオレの所へ連れて来た。


「奏来…」


それっきり何も言えなかった。


もし、自分の親が今死んでしまったらどうだろうなんて考えたりはしたけれど、やっぱりかけてあげられる言葉が見つからない。