*********** 奏来の父親は、外資系の会社に務める年中忙しい人だった。 オレの中に奏来の父親の影はあまりない。 最後、棺の中におさめられた奏来によく似た顔に手を合わせた時の眠った顔が、オレの中の奏来の父親。 見つけた時には手遅れの、膵ガンだった。 衰弱していく父親を見られたくなかったのか、奏来はオレと兄貴の見舞いすら断った。 ガンの発見からたった4ヶ月で、帰らぬ人となった。 今から6年前、奏来の父親は、奏来の中学のセーラー服姿を見ずにこの世を去った。