「翔ちゃん、奏来の気持ち、わかってくれるかしら…」


今のオレじゃ無理だ。


この気持ちも、奏来の綴られた言葉も飲み込む事ができない。


何もかもわからなくなって。


ベランダに立つ冷えきった奏来の体を抱き締めた。


奏来は微笑みながらオレの涙を拭って。


そっと手を差し出す。


声を発しない奏来の口元が動く。


あ・り・が・と・う


そう言ってオレの手に乗せたのは。


ストラップのはずされたガラスのタンポポだった。


「奏来…。
奏来ぁぁぁ!!」


泣き崩れるオレの耳に奏来の声がこだました。


“翔ちゃん、大好きです。ありがとう”