ガラスのタンポポ

信じられない。


信じたくない。


けれどこれまで、奏来は一言も声を発してはいない。


オレが今聞いている事は、現実なのか…?


さらに兄貴は続ける。


「父方の祖父母もおじさんもガンで亡くなってるからな。もしかしてと思って俺が病院に連れて行ったんだよ。信じられなくて、いくつも病院を転々とした。でも、結果は同じ喉頭ガンだった…」


オレは震える手でコーヒーカップを持ったが、飲む事ができなかった。


黒く光るコーヒーの温度すら感じない。


「病名がわかれば、治療は早い方がいい。若さからいっても進行が早いからな。喉頭の全摘手術を行った。幸い、リンパへの転移はなかった。入院、手術、放射状治療、これが奏来が学校にも行かず、お前にも会わなかった理由だ」


「どうして…。どうしてオレだけ知らされなかったんだよ…」


「それが奏来の望みだった」