ガラスのタンポポ

オトばあの反応はなく、施設のヘルパーさんはオレ達に軽く頭を下げ帰って行った。


「おばあちゃん?家に帰ろうね?」


奏来が話しかけても返事はない。


それでも奏来は、


「今日は運動できた?」


「お昼ご飯、おいしかった?」


と、返事のない問を続ける。


オトばあを部屋へ連れて行き、オレが車椅子から布団へうつす。


随分、軽くなったな…。


思うけど口には出さない。


奏来の寂しそうな顔は見たくないから。


「翔ちゃん、ありがとう」


奏来が言うと、オトばあはまた咳をして静かに目をつむった。


寝息が聞こえるまで奏来はオトばあから離れない。


似つかわしくない大きないびきが出始めると、オレと奏来はやっと安心してそっとリビングに移動する。