ガラスのタンポポ

一一一ピンポーン


チャイムが鳴ったと同時に、奏来が玄関へ走った。


静かに涙を流す奏来の肩を組んでいるのは…兄貴。


すぐに現状を理解したのか、兄貴はオトばあの布団をめくり、


「母さん」


と、一言だけ語りかけた。


オトばあの目の色が変わる。


「孝司!!孝司、助けに来てくれたんだね!」


オトばあは叫ぶ事を止め、兄貴にしがみつき、


「孝司!孝司!」


と、もう存在しないはずの人の名を呼び続けた。


「怖かっただろ?母さん。もう大丈夫だよ。さあ、薬をお飲み。楽になるから」


兄貴はおばさんがあんなにも苦戦していた薬をあっさりと飲ませ、布団を整え、そこにオトばあを横たえた。


叫び続けた疲れと、兄貴が傍にいる安堵感からか、オトばあはすぐに寝息を立て始めた。