ガラスのタンポポ

頬の涙を拭うと、奏来は突然ケータイを持ち出した。


ガラスのタンポポが揺れる。


何度かコールしてつながった先は。


「…っ…っ…聖ちゃん…」


一一一兄貴だ。


「聖ちゃん、おばあちゃんが大変なの。…っ…っ…どうしよう…」


それだけ言うと電話を切られたようで、奏来はケータイをリビングのソファーに置いた。


「おばあちゃん、おばあちゃん…」


奏来は悲鳴と嘔吐を繰り返すオトばあを、なんとか呼び戻そうと声をかけ続ける。


「ヒィーーーッ!!」


そんな状態が止まない。


おばさんも何とか薬を飲まそうとするけれど、オトばあは頑なに拒否し、水の入ったコップをひっくり返す。


「おばあちゃん…」


オトばあは何に対してこんなに怯えているのだろう。


オレ達には見えない、知らない何かに怯え、震えている。


結局、何もできずオトばあの悲鳴が止まずに一時間が過ぎた。