あぁ。


そうか。


おじさんを失った奏来はあの日以来、ずっと1人で立っていたのだ。


おばさんに甘えず、オトばあの介護を必死にしながら、友達も作らずたった1人で。


こんなに近くにいるオレや兄貴にまで頼る事なく、たった1人で。


1人で怯えていたのだ。


「奏来?オレはここにいるんだよ。どこにも行きやしないし、消えもしない。触ってごらん?」


少し顔を離すと、奏来の小さな手がオレの頬にそっと触れた。


「な?あったかいだろ?こんなに近くにいるだろ?」


奏来はまた涙を流して頷いた。


「奏来は1人じゃない。大丈夫、オレがいるから。ずっと傍にいるから」


「うん…。翔ちゃん…。翔ちゃん…」


奏来はオレの首へ両腕を絡めると、安心したのか、幼い子供のように無垢な笑顔を見せた。


オレは奏来の腰に手を回し、こわれないよう抱き締めると、奏来は静かな寝息を立てはじめた。