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奏来との出逢いは、12年前、当時オレが5歳の時だった。
ちょうど今と同じ、春。
年の離れた小六の兄貴に邪魔くらがれるのも気にせず、必死になって背中を追いかけ、いつもの公園。
団地に子供が多いわりに、いつもオレと兄貴だけの公園に。
ユラユラ揺れるブランコに1人の少女と、女の人を見つけた。
その頃のオレに、とうてい恋なんてものの自覚はなかったけれど、今でも覚えている。
タンポポの絨毯と青い空をバックに、茶色がかった長い髪がブランコと同じリズムで揺れ戻る春の1シーンは、まるで絵本の中から飛び出してきそうな程メルヘンで。
きっと兄貴も同じだったんだろう。
その場から一歩でも公園に踏み込んでしまえば、キーキーと軋むブランコの音と、くるくると笑う女の子の声がいっぺんに消えてしまうような気がして。
しばらく動けずにいた。


