禁煙する倭ノ宮桔梗と泣き出さない〝たたりもっけ〟

両手を腰にやるのはくせです。特に、桔梗さんのような人の前ですと、輪をかけて私はふんぞります。

「いけませんよ煙草は。さっき鍵をかけてそこの引き出」

「あーあーあーあー」

「しにしまっ」

「あーあーあーあーあーっ」

「てたじゃな」

「あーあーあーあーあーあーあーっ!」

「なんですかもう! なんでそんな声出すんですか!」

声ばかりか、耳を手で押さえて体をねじって後ろまで向いています。まるでではなく明らかに、私の言葉を耳に入れる気がありません。

いい歳をした大人が口を尖らせます。

「だってのぉ、聞いたらどこにしまったか思い出してしまうだろうて。忘れたなら忘れたほうがよいんじゃわ。そのほうが俺には都合がよいしの」

「そう、ですか」

つまり、禁煙するならキセルのありかごと忘れてしまおう、と。

「わかりました、なら言いません。それで?」

「んむ?」

「話の流れまで忘れないでくださいよ。たたりもっけはわかりました。でも、香蘭さんがたたりもっけのとこへってどういう意味ですか?」

場合によっては特集記事が組めてしまいそうな香蘭さんです。それでなくても聞きたくなるのは職業病かもしれません。