「ん、たたりもっけとはな、死した子供の魂のことさ」

「死んだ子供の……?」

「さよう。幼くして死んだ児の魂はの、たたりもっけとなって泣くんじゃわ」

「はあ……」

つまり、幽霊、ということでしょうか。俄に信じがたい話です。

あごをさすった手を懐に入れたり、袂に入れたりした彼は、

「で、の……ふぅむ」

「?」

「ううむ……」

「なにか、探し物ですか?」

香蘭さんほどではありませんが、私も店のことはわかります。なにせ今や、どういういきさつか時々、店番を手伝うほどなのですから。実際、今日もなにか手伝うことはないかとやって来たのです。日曜だし、暇だし、なにより実は、この倭ノ宮駄菓子店の醸し出す古きよき時代の家屋の匂いが好きで。

桔梗さんはやがてぴたりと手をとめ、落胆の表情を浮かべました。若いはずなのに、若いはずなのにやたら哀愁の漂う所作であごをさすり、

「俺、禁煙中だったのぉ」

遠い目で、懐かしそうに呟きました。キセル、探していたようですね。にわとりでも三歩歩くまでは覚えているというのに、桔梗さんはその場から動いてもいないのに忘れたのでしょうか。苦笑しか出ません。