基本的に……桔梗さんは言うべきことの半分も口にしません。たいてい曖昧で掴みどころのないことばかりを並べ立て、「わからんかいの?」と勝手に首を捻るのです。

私は香蘭さんではありませんし、桔梗さんの言いたいこと、言っていることを、言葉半分で察することなど、不可能です。

で、す、が。

彼は、求められた質問に、意味のない返答はしません。Aの質問に対し、間をすっ飛ばして難易度の跳ね上がる応用回答Zで答えてはきますが、無意味な返答はしません。彼の省略したB~Yの間を埋められるかどうかが、問題なのです。

幸いにして、今日の桔梗さんは親切だったと思います。香蘭さんを間に挟んでくれたおかげで、回答Zまでの中間式が見えたのですから。

「――はい、すみません。今日はこのまま取材回りして、そのまま直帰させてください。はい。はい。……ありがとうございます。――よし、と」

デスクへの連絡をすませて、ケータイを閉じた私は、ちらりと電信柱を確認しました。番地は、四丁目、2ー13……香蘭さんの言っていたところです。彼女の姿は、見えませんが。