「とても、残忍な犯人だと思います。だってそうでしょ? 殺されたお子さんはみんな、ご両親から本当に愛されてた。本当に、本当に大切にされてた。そんな子供ばかりを狙って、あんな風に殺すなんて」

「残忍極まりない?」

「そうですね……。どうしてそんなことをするのか、理解できないです。他人の大切なものを奪うなんて、どれだけ、人の気持ちがわからないんですか……人間のクズですよ」

記事を書き終えたばかりだから、私の中には遺族の方の強い怨念が植わっているのでしょう。記事を書くということは、彼らの気持ちを代弁するようなものなので。少し言葉遣いが乱暴になってしまったのも、そのせいです。

デスクは、中田くんの机に置いていたコーヒーを一口、喉に流しました。なにかに呆れるのとは違う溜め息がひとつ。

「解決してくれんもんかね、なるだけ早く。でないと俺、安心して眠れんのよ」

「あ、そうか……デスクの家、市内でしたよね」

そればかりか、ちょうど十歳の娘さんがいらっしゃるはずです。地域といい年齢といい、そして、デスクの娘さんへの愛情の深さといい、条件は揃っています。彼にとってこの事件はまったく他人事ではないのです。