奇妙さに拍車をかける要素があるなら、いっそ次から次へと出てきてくれればいいのに。そう思った矢先に、なんだかんだで倭ノ宮駄菓子店の名物・香蘭さんが駒下駄を鳴らして戻ってきました。音で気付いたのもありましたが、左からゆっくりと人影がアスファルトに伸びるのが見えたのです。

「あ」

そう、影です。あの男の子は、影がありませんでした。日向にいたにもかかわらず。

「桔梗さんやっぱりさっきの男の子、普通の子じゃ――」

「あるじさま、ただいま戻り――」

そして私達は同時に言葉をつぐみした。

この短時間で、倭ノ宮桔梗さんは三度目のトリップへ旅立っていたのです。

「ほんに」

香蘭さんが、困ったように、頬に手を当てました。

「ほんに最近、あるじさまは夢見が多くございます」