下手をすれば三流ゴシップ誌のような記事になるかもしれませんが、出どころが倭ノ宮駄菓子店であるなら、言い知れない信憑性があります。奇妙な店の奇妙な店主が持つ奇妙なモノクル――頭の中に記事の文書がつらつら浮かび上がってしまいます。多少胡散臭くとも特集を組めるのではと思ってしまうのは、マイナーな地方雑誌の編集者だからでしょうか。出版業界を甘く見るなとデスクに言われていますが、しかし倭ノ宮駄菓子店は逐一私のなにかをくすぐるのです。

私の息が巻いてきたからでしょうか、桔梗さんは両手で待ったをかけてきました。

「やれやれ辻井さんや、落ち着きやね、な、落ち着きや。お前さんの見たあの子はね、死んじゃおらんのよ」

「だってさっき、香蘭さんがお菓子配ってるって教えてたじゃないですか」

「まあの。だがね、辻井さんはやっぱり、たたりもっけをよぅ知らん」

「そりゃ、よぅは知りませんが」

「うむ。あの男の子は、泣いとらんかった。たたりもっけはの、泣くんじゃわ」

「……ということは……?」

「あれはたたりもっけではない。つまり、幽霊じゃあないということじゃわ」

「……なぁんだ」