禁煙する倭ノ宮桔梗と泣き出さない〝たたりもっけ〟

「金はの、もう香蘭からもらっとる」

「そう、なんですか?」

「ああそれに、香蘭はそのために出掛けたんだしの」

「そのためにって」

「さっきの子は、ちゃんと菓子がもらえたかねぇ」

「えっ、だって香蘭さんは……」

たたりもっけにお菓子を配りに。

死した子供の魂を泣き止ませに。

お菓子を。

死した、子供に。

たたりもっけ。

さっきの男の子。

「じゃあ桔梗さん、さっきの男の子――!」

「んー?」

「というかそのモノクル、まさか、もしかして……!!」

「辻井さんや、バカなこと考えちゃあいかんよ?」

「ごまかさないでくださいよ桔梗さん!!」

死んだ子供の魂をたたりもっけと呼ぶならば、香蘭さんがお菓子を配っている相手は幽霊ではありませんか。そして、先ほどの男の子がたたりもっけなら、あれは、つまり幽霊。私には霊感なんぞありません。それが見えた理由は、桔梗さんのモノクルにほかならないはずです。

「そういう代物なんですか桔梗さん! そのモノクル、死んだ人が見えたりとか……!」