桔梗さんの暴言に意義を申し立てたくあげた声が、少年を驚かせたのでしょうか? 彼はピストルが鳴ったように素早く桔梗さんの指した方向へ駆けていきました。
まったく釈然としない私は、片手は番台に突き、片手は空中に伸ばした間抜けな格好のまま、呆けてしまいました。これではまるで、私が本当に怖いお姉さんのようではありませんか。
緩く握った拳を口許にやってくつくつ鍋が吹くように笑った桔梗さんが、やおら立ち上がります。
「人のものを勝手に使うから、そうなるんだわ」
「人のものって……あ」
モノクルのことでした。確かに勝手に拝借はしましたが、ですが、それで先ほどの暴言の説明になりますか。なりません。弁明があるなら聞くつもりで、「だからって、だれが怖いですか」と訴えながら、モノクルをお返ししました。
「第一、香蘭さんがお菓子配ってるなんて教えたら、上がりが出ませんよ?」
余計な一言を加えると、手を払って私を番台から退かした桔梗さんは、入れ替わりに腰を下ろし、まただらしなく胡座を掻きました。そして、まるで、私がもう一度モノクルをかけたいと言い出さないための予防のように、それを袂にしまって、太宰的な頬杖を突きます。
まったく釈然としない私は、片手は番台に突き、片手は空中に伸ばした間抜けな格好のまま、呆けてしまいました。これではまるで、私が本当に怖いお姉さんのようではありませんか。
緩く握った拳を口許にやってくつくつ鍋が吹くように笑った桔梗さんが、やおら立ち上がります。
「人のものを勝手に使うから、そうなるんだわ」
「人のものって……あ」
モノクルのことでした。確かに勝手に拝借はしましたが、ですが、それで先ほどの暴言の説明になりますか。なりません。弁明があるなら聞くつもりで、「だからって、だれが怖いですか」と訴えながら、モノクルをお返ししました。
「第一、香蘭さんがお菓子配ってるなんて教えたら、上がりが出ませんよ?」
余計な一言を加えると、手を払って私を番台から退かした桔梗さんは、入れ替わりに腰を下ろし、まただらしなく胡座を掻きました。そして、まるで、私がもう一度モノクルをかけたいと言い出さないための予防のように、それを袂にしまって、太宰的な頬杖を突きます。

