禁煙する倭ノ宮桔梗と泣き出さない〝たたりもっけ〟

なにか、せめて一味でも桔梗さんのような和テイストが必要です。それでなくとも、この古きよき家屋である倭ノ宮駄菓子店に馴染めるような……

「……拝借します」

聞こえていないとは思いますが、一応の断りを入れて、先ほど桔梗さんが外したモノクルを取りました。片眼鏡というくらいだから度が入っているのかと思いましたが、特別視界に変化はありません。近視用? 遠視用? 乱視用? どれも違います。

とりあえず、このモノクルをかけていれば、少しくらいこの店に馴染めるでしょうか。せっかくなので、番台に座って、桔梗さんの真似もしておきましょう。そう、例の、太宰治をイメージした頬杖です。突いてから、右手だったか左手だったか悩んでしまいました。桔梗さんは左手で頬杖を突いていたような――

「あ」

その時、店の外に人影が見え、ハッとしました。店の中は暗く、日の照る外はやたら明るく見えます。真っ白い空間にぽっと浮き出たようなそれは、男の子でした。パーカーに半ズボンです。

「お買い物かな? いらっしゃい」

ここぞとばかり、しっかり店番を務めようと思ったのですが、男の子は店の敷居を跨ぎません。ただこちらをじっと見つめています。