一度そうなってしまうと、どれだけ大きな声を出しても桔梗さんは応えなくなります。頬を張ってみたことはありませんが、さすがにそこまではできません……。なにより、桔梗さんは帰れと言いましたが、店主がこの様ではなおのこと、お客さんが来たときにはどうするのでしょう。ここは私がしっかりしなければなりません。幸い、店に並んでいる駄菓子にはみな、わかりやすく大きな文字で値段が書いてありますし、数が小さいのですから暗算も楽なものです。それに、五十円より高いものは、アイスくらいです。六十円のかき氷に、八十円のチョコバー、百円のソフトクリーム。私だってそれくらいは覚えています。子供のひとりやふたり、いえ集団でもどんと来やがれです。
仮店主を勝手に襲名した私は、腰に手をやったまま、店の入り口に体を向けてふんぞりました。いつでも来い、という気持ちの現れでしたが……私の格好は白いドレスシャツにスリットスカートです。ピアスに口紅、ヒールですから、まあ、綺麗めなオフィスレディーでしょう。そんな私が仁王立ちの店番をしても……駄菓子屋仮店主の威厳や風格がないというものです。むしろ、キツそうなお姉さんがいると思われてしまうかもしれません。
仮店主を勝手に襲名した私は、腰に手をやったまま、店の入り口に体を向けてふんぞりました。いつでも来い、という気持ちの現れでしたが……私の格好は白いドレスシャツにスリットスカートです。ピアスに口紅、ヒールですから、まあ、綺麗めなオフィスレディーでしょう。そんな私が仁王立ちの店番をしても……駄菓子屋仮店主の威厳や風格がないというものです。むしろ、キツそうなお姉さんがいると思われてしまうかもしれません。

