禁煙する倭ノ宮桔梗と泣き出さない〝たたりもっけ〟

ばり、ぼりがり。

がり、ぼりばり。

四の五の言いつつも結局シガチョコをすべて噛み砕いた彼は、指先を舐めながら、どかりと叩きに腰を下ろしました。白くか細い枝のような手が、上へ下へ揺れ揺れ。

「辻井さんや。お前さん、泣いておる子供がおったらどうするかい」

「それぁ、あー……」

「菓子のひとつでもくれてやって、泣き止ませたが早かろうて」

「訊いておきながら私の答えは聞かないんですか」

「ん、最初から大して期待しておらんしの」

この人は……。

私がかちんと来ていることなどさっぱり感じ取っていないでしょう彼は、埃を被って黄ばんだレジスターへ手を伸ばし、三十円取り出し、

「ほい、三十円。あい、毎度あり」

自分の右手から左手へパスして、またレジの中へしまいました。もしや今ので、売買成立したのでしょうか。今の慣れた流れや自分とのポンポンとしたやり取りを見る分では、初めてではなさそうです。この店、採算は取れているのでしょうか……。店番をしている香蘭さんが時々つけている帳簿の中身が――恐らく桔梗さんがキセルをしったのと同じ引き出しにあるそれが、深刻に気になりました。