私は布団の中で小説を書いていた。

温かい家族。経験がない為全て妄想になってしまったが、私の将来の理想の家族。

私が母親になったら、子供をうんと愛したい。鬱陶しいと思われる位に愛したい。

愛が足りないなんて、寂しいなんて、死にたいなんて、思わせたくない。絶対に。

書き終えて、久しぶりに笑みがこぼれた。少し遅れて、嘲るような笑みもこぼれた。

何て事だろう。小説の中の何人もと幸せを共有出来るのに、母1人と解り合えないとは。

引きこもりになって20日が過ぎた。母はもう私を打たなくなり、今は無視を決め込んでいる。お父さんには相変わらず心配をかけている。

菜々子達からのメールは絶えなかった。皆揃って、もう少し、と言っている。

私にはもうゴールが見えない。最初から諦めている私に、もう少しも何もないと思う。

菜々子、皆、ごめんね。私は小さくて非力で。変わりたいと願ったのに、真逆に変わっちゃったんだよ。

不意にケータイが着信を告げた。非通知。声を発するのはかなり久しぶり。でも私は電話に出た。

「…もしもし」

蚊の鳴くような小声は相手に聞こえなかったと思う。

でも返ってきた声は確かに大好きな声だった。