「ねぇ、じゃあ私は茜の何なのかな?」


「何だよ、今更」


「茜にとって私は何?」




少し睨みつけるようにして俺を見据える天音。





何、と言われてもなぁ。



付き合いは確かに長いけど、一度だって天音を特別な目で見た事はねぇし。





「ダチじゃねぇの?」




ダチ…ってほど

仲良しじゃないか。




気付いたらいつもそばにいて

うぜぇくらい構ってくる女。




俺の中の天音はそんな存在だ。





「私は茜を友達という目で見た事なんかないよ」




少し目を伏せてそう呟く天音を

ちょっとだけ可愛いと思った。



…いかん、いかん。






「ずっと…大好きだったもの。茜はずっと、好きな人だもの。

どうして胡桃ちゃんより長く一緒にいたのに、ずっと前から好きなのに私じゃ駄目なのよぉ…」




目尻のアイラインが涙で落ちて、天音の目元は黒くなってしまった。




高校の時、俺に彼女が出来る度こうやって泣いていた天音。



でも、いつもすぐに別れるから

俺に直接好きだとは言って来なかった。





今回は俺自身が気付いてるように

今までの遊びとは違って真剣に胡桃に惚れてるって



天音も気付いていたのかな。






「…女は愛すより愛されろ。天音にもいるよ。ちゃんと愛してくれる人」




よが付くキモいロン毛のオッサンとか。





「それは遠回しにフってるの?」


「…ごめんな」




胡桃と出会ってなくても俺が天音を好きになる事は多分、ない。



よく、一緒にいていつの間にか好きになってたとか言うけど


長い間一緒にいても好きだと気付かないのは、その存在を恋愛対象として見てないからだと思う。




一度だって恋愛対象から外れてしまえば

きっと、それ以上にはならない。