自宅に着くと、庭のベンチにお兄ちゃんが座っていた。




「お兄ちゃん、ただいま」


「…胡桃?随分と早い帰宅だな」




お兄ちゃんはベンチから立ち上がる。



暗闇に紛れてお兄ちゃんの表情がよく分からないけど、元気ないみたい。





「あの変態ヤンデレ野郎に痴漢行為でもされたか?」


「違うよ。茜くんがね、お兄ちゃんを1人にしないよう、私の家に行こうって言ってくれたんだよ」




茜くんに気付いたお兄ちゃんは盛大に舌打ちをした。





「…余計なお世話だ」

「寂しい男な自分に酔ってたんですか、お兄様」

「黙れ。ロリコン野郎」




もう、お兄ちゃんは…。






「胡桃を独り占め出来たというのに、わざわざ自分を嫌ってる奴に会いに来るとは馬鹿なんだな、お前」


「お兄ちゃん!!」




いくらお兄ちゃんでも茜くんを悪く言うのは許せないよ!




ポカポカとお兄ちゃんを叩いていると


茜くんがフッと息を吐いた。





「…お兄様の為じゃねぇですよ。胡桃がそう望んだからだ。それに…借りは作りたくねぇからな」




茜くん…カッコイイ。






「…そうか。まぁ上がれ」


「いいんですか?」


「胡桃が望んでいるなら仕方がない。…ただし、明日以降は家の半径100mには近付けさせないからな」




口調はいつもと変わらないお兄ちゃんだけど

どことなく優しく感じるのは何でかな。