「高山くん大丈夫?」


「あぁ…」




顔から砂浜に突っ込んでいる高山くんに手を貸すと


高山くん目掛けて飛んできた何かが、高山くんの顔にクリーンヒットした。






「…バ…バレーボール!?」




飛んできたのはビーチボールではなく、固いバレーボール。



何処から飛んできたのか辺りを見渡したけど、ボールを取りに来る人はいない。




……?






「俺、今日厄日なのかな…」


「大丈夫だよ。悪い事の次は良い事があるって言うでしょ?」


「綾瀬のそういうとこ好きだな」


「ありがとう。私も高山くん好きだよ」




茜くんにもいつかこうやって素直に“好き”って言えたらいいな。




でも今は


茜くんの事を考えるだけで嬉しいからいいんだ。






「じゃあ、俺らも付き合うか?」


「…え?」


「俺は綾瀬の彼氏になりたい」




えぇぇぇえ!?



付き合う?
彼氏になる?



え?

誰が誰の!?





「えっと…。ん?高山くんが…あれ?」


「綾瀬は俺と付き合いたくない?」




高山くんは私の手を掴んだ。




高山くんは細い茜くんと違って健康的な体つきをしていて逞しい。


手も大きくて男らしい。





だけど、だけどね





「…ごめんね。私、大好きな人がいるの。だから高山くんと付き合いたいとは思わない」


「そっか…」




茜くんに触られた時みたいにドキドキはしない。






茜くん以外の人への好きは、みんな同じ好きであって


それ以上じゃないの。







「胡桃―!ホテルに戻る時間よ」




香織に叫ばれた私はみんなの元に戻り、更衣室に向かった。