「胡桃は高山って奴、好きだったりする?」


「はい。優しいので好きです」




ガーン!!



俺、失恋決定?




え?マジ?





「じゃあ…付き合えばいいんじゃね?」


「え?」


「そうしたらノケ者にならないじゃん」




高山ね、高山。


よし、もう覚えた。




沖縄行って見つけたら、海に沈めてやる。



水死体になって胡桃に会うがいい。





「そういう好きじゃないです。よっしーやお兄ちゃんを好きと思う好きですよ」




胡桃はココアにいつものようにガムシロを淹れながら呟く。





「…俺は?」



何となく問うと、胡桃はボッと真っ赤になった。




ん?

何、その反応。




やっぱ胡桃も俺を……





「あ…茜くんは違う好きです!!」




ちょっと期待ハズレの返答だったけど


これ以上イジメるのは可哀相だから、今はいっか。





「胡桃は甘いのが好きなの?」


「え?」


「いつもココアにガムシロ淹れるだろ」




ココアなんて何も淹れなくても、吐きそうなくらい甘いのに。





「甘いのを食べたり飲んだりすると、幸せな気持ちになるんです」




幸せね。




「苦いのも嫌いではないですよ」


「カフェモカもココアみたいで美味しいよ」




飲んでいたコーヒーカップを胡桃に渡すと、胡桃はコクっと一口それを飲んだ。





「あ…本当だ。美味しいです」


「ココアよりちょっと苦いか」


「茜くんといると幸せだから、十分甘いです」




そう言って柔らかく微笑む胡桃に


柄にもなく俺も


優しく笑みを返した。






あぁ…

俺も幸せなんだ。