安心して力が抜けた体を、茜くんが優しく支えてくれた。



「…出よう。歩ける?」


「…あっ…」




力を入れようにも、震えて言うことを聞いてくれない体。



それに気付いてくれたのか、茜くんはヒョイと私を抱き上げてくれた。




この細い体のどこにそんな力があるんだろう…



そんな事を思いながら、次第にドキドキとうるさく鳴り響く鼓動を感じて

何だか恥ずかしくなった。






「跡、付いちゃったな」



ライブハウスから出て、茜くんは会場の外の階段に私を降ろし、手首を見た。




「ごめんな。1人にしたから」


「いいえ!助けてくれてありがとうございます。…さっきの茜くん、カッコ良かったです」



セリフは少し意味が分からなかったけど、鋭い目つきやドスの利いた声が。



凄く…ドキドキしたよ。





「ごめんなさい、私のせいで。…折角のライブが」


「あぁ、いいんだよ。俺、吉澤先輩を冷やかしてやろうと思ってただけだし」



へ?


冷やかす?





「それに…私服の胡桃見れたから、もう満足」


「わっ…わわわわ!そんなっ…!こんな場違いな服装、恥ずかしいですっ」


「凄く可愛いよ」




キャー―っ!


可愛いって言ってくれたぁぁ!



コレ着てきてよかった。





「フッ。胡桃、顔真っ赤」

「…今、こっち見ないで下さいぃぃっ!!」




からかうように、はにかむ茜くんは凄く可愛かった。





私、やっぱり…

この人が大好きだなぁ。