出勤時間より少し遅れてバイト先に着き、スタッフルームの自分のロッカーを開けた。



白いYシャツに黒いネクタイを締め、腰に長げぇ赤いエプロンを巻く。



名前のセンスはねぇ店だが、制服はまぁ悪くない。





「今日も胡桃ちゃんいるかな」



ルンルン気分でホールに向かうと丁度胡桃ちゃんがカウンターにいた。




「あっ!茜くん。今日もシフト入ってたんですね」


「胡桃ちゃん」



あー今日も可愛いなぁ。



あまりの可愛さに、周りの人間共が霞んで見えるよ。




「もう名前で呼び合う仲なのかよ。お前も隅に置けねぇな」


「いや〜」



ウリウリと吉澤先輩に肘で小突かれ、少し照れた。




「胡桃!早く来い」



誰だ、馴れ馴れしく胡桃ちゃんの名前を呼ぶのは…


と、声のした方を見ると、ベビーフェイスの男がいた。




えっ!

もしかして…




「はーい!…じゃあ茜くんとよっしー、また」



胡桃ちゃんは頭を下げると、ココアとカフェオレの入ったグラスが乗ったトレーを持って、男の所へ行ってしまった。




「…吉澤先輩」


「あん?」


「あの男、胡桃ちゃんの彼氏とかいう死ねばいい存在じゃないですよね?」



彼氏だったら解剖してそのまま放置してやる。





吉澤先輩を見据えてそう問うと、先輩はニヤッと笑った。



「あぁ、あれは胡桃の彼氏だ」


「――っ!!」



解剖放置プレイ…決定!!




「お前…なんつー顔してんだ」



酷い顔で悲しんでるであろう俺を見て、先輩が呟いた。




「嘘だよ。あれは胡桃の兄ちゃんだ。前に胡桃は俺のダチの妹だって言ったろ?そのダチがあいつだ」

「お兄…さま?」




だ…だよな。


あんなチビっころくて、童顔で

品のカケラもなくて男の勲章もショボそうな奴が、胡桃ちゃんの彼氏なワケがねぇ。



兄ちゃんがいいポジションだ。