見極めろ?

何を?




「棗さんって上から目線な物言いだけど、本当は優しい人だよね」



突然、カウンターに接してる席から顔を覗かせる天音。

ああ、キモロン毛を待ってんのか。





「ねぇ、茜。私は茜に想いをぜーんぶぶつけたから前を向けたの。アンタも胡桃ちゃんに全部伝えてみたら?案外、スッパリ忘れられちゃうものかもよ?」




あんなにハマった女の子を忘れる?


でも、このままなら
いずれ忘れなきゃならないよな。




何だか本当、
胡桃じゃねぇけど

出逢ったことさえ幻だったかのように、今は全てが夢のように思える。



本当、出逢ってさえいなかったような感覚に襲われる…。



これを喪失感って言うんだろうな。





「噂をすれば、胡桃ちゃんよ」


天音に肩をつつかれて顔を上げると、店の外からこちらを眺めている胡桃がいた。

目線が合うと反らされる。




「…胡桃?」



恨めしそうに見てたような気がしたのは気のせいか。



だよな、俺はもう、
あの子の中にはいないんだから。





「追って来なさいよ。大和ももう来るし、私が言っておくから」


ほら!と、背中を押され、躊躇する足を胡桃の方に向けた。





「…くるみっ!」



少し足早に歩いている胡桃を呼び止めると、不思議そうな顔をした彼女が振り向いた。