「…すみません」


「いえ、こちらこそ」




謝り返してくれた女子高生は、胡桃と同じ制服を着ていた。




髪はボブだけど

胡桃と同じで栗色のフワフワパーマ。




顔はギャルメイクで全く胡桃には似てないけど。






「あら、誰かと想ったら胡桃ちゃんじゃない。久しぶりね」




え?

胡桃?誰が??





「…天音さん、こんにちは」




挨拶をし返したのは…


さっきのギャル。




え?
これが胡桃!?




見た目がまるで
悪魔に堕落した天使。





…そういや、メイク道具溜め込んでたもんな。



髪まで切って、ついにメイク道具使っちゃったんだ…。





「私の事は忘れてないのね。茜の事はすっかり忘れて逃げた癖に」


「やめろ、天音」




嫌味な言い方をする天音の腕を引っ張ると

天音は俺の手を振り払う。






「忘れるなら心底嫌ってた私にすれば良かったじゃない。なんで茜なの…?私は胡桃ちゃんだから茜を諦めたのに」




天音は胡桃の顎をガッと掴むと

クイッと上に引き上げた。






「…童顔なアナタにこの化粧、全く似合ってないわよ。シャドーの位置違うし、眉毛上げ過ぎ。それに真っ赤な口紅なんてお子様には早いのよ。…ダサッ」



「…余計なお世話です。失礼します」




胡桃は天音を睨むと

俺に見向きもしないまま店の中に入って行った。





「何、あれ。まるで別人ね」


「…そうだな」


「茜へのあてつけかしら」




あてつけ、ね。


実際そうなのかもしんねぇな。






そのまま店内に入り、天音と別れスタッフルームに行くと


先輩がだらしない顔でニマニマしていた。




……キモい。