純愛ワルツ

「…マニキュア？」




床に散らばったのは


色んなカラーのマニキュア、グロス、アイシャドーにアイライナー。



机の上にもまだ

ファンデーションやアイラッシュが置いてある。




化粧なんかしない胡桃が、何故こんなにもメイク道具を持っているのか。




そう不思議に思いながら落ちた物を拾っていると


机の横に沢山のメイクやファッションの雑誌が散乱しているのに気が付いた。




何となくパラパラと雑誌を捲ると


“この口紅の色、天音さんと同じ”


“お小遣入ったらこのスカート買いに行く！”




など、ページ毎に胡桃が書いたらしいコメントが細々と書き記されていた。





「……バカだな。本当…バカ。可愛過ぎて…泣けてくるだろっ…」




全ての雑誌に目標のようにデカデカと書かれた文字を見た瞬間


涙が出た。





“茜くんに似合う大人の女性になるんだ！

頑張れ、私！”







ごめんな。


可愛いとか
萌えるとか


いつもそんなくだらない事ばかり口にして

肝心な事をひとつも言わなかったよね。




それで伝わるワケがない。