純愛ワルツ

「いっぱい…泣いた、んだね。瞼が赤くなって…腫れちゃってるよ、胡桃」




ススス…っと目元をなぞってから

胡桃から目を反らし、部屋を見渡した。




部屋には、ぬいぐるみが棚に並べて飾られていて


壁に掛かったコルクボードに友達との写真が貼られている。




それを見てから

俺は勉強机に近付いた。





机の上には“茜くんとの用”と真ん中の台紙に書かれた写真立て。




そういえば俺達

写真もプリクラも撮ってない。




それどころか

デートらしいデートもしてない。





「…不安にもなるよな」




恋人らしいこと何もしてやってないし、何処にも連れて行ってやってない。




一緒にいるだけで幸せだと

勝手に満足して
胡桃の優しさに甘えて



俺は……。





「くそっ…!!」




力任せに机を叩くと

その衝撃でバラバラと何かが落ちた。