純愛ワルツ

「あー…ごめんね、なっちゃん。そのオチ読めちゃったから眠くなった」


「…やはりお前は死んでしまえ」


「棗、死ねなんて冗談でも言っちゃダメよ」




私達の席に戻ってきたくらちゃんさんは、優しくお兄ちゃんを叱る。




「ただでさえ棗は愛想が悪いんだから言葉遣いまで乱暴だと、茜くんに嫌われちゃうわよ?」


「こんな奴に好かれたくはない」




ツンとするお兄ちゃんに笑いながら

ハンカチをしまっているくらちゃんさんのバッグから


ハラリと一枚の紙が落ちた。




「くらちゃんさん、何か落ちましたよ」




拾ったそれは、栞だった。




…あ。





「これは…」


「ありがとう、胡桃ちゃん。その栞、宝物なの」




そう言って大事そうにバッグにしまうくらちゃんさん。



本当に…




「くらちゃんさん、過保護で頑固で怒りっぽい兄ですが、本当は凄く優しいお兄ちゃんをこれからもよろしくお願いします!」


「胡桃ちゃん?」



くらちゃんさんに頭を下げると、シーン…と辺りが静まり返った。





「胡桃、なんで泣いてるんだ?」




茜くんは俯く私の頭を撫でてくれた。





私ね

お兄ちゃんの事大好きだから、嬉しいんだよ。




くらちゃんさんのあの栞に


いつだったか突然なくなった

家の庭に咲いていた色んな花の花びら達が

押し花にされていたのが。